第104回 新製品の企画開発の進め方

フィルタリング・業務機能分析・投資回収検討



1.フィルタリング

第2回で、説明しましたがアイデア発想などで新商品アイデアが多数出てきたら、フィルタリングでプランの収束を図る。1次フィルタリングの段階では概略イメージで進めてよい(面白いものは残す)。2次フィルタリングの段階では、かなり具体的な検討を行ない絞り込む。



生産革新第20-5

2.業務機能分析を用いたヒット商品開発

<業務機能分析とは何か>

開発及び生産や販売など、各種業務が持っている目的、役割、働きなどの基本的なあるべき姿、状態を系統的に分析、整理し、そこから問題点を抽出、改善を図ろうとする考え方、及びその手順のこと

生産革新第20-5

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3.想定できる範囲を広げ、リスクを想定内に収める

新商品開発にはリスクはつきものである。視野を広げてリスクを見極め、組織としての洞察力を発揮してリスクを想定内に収める。適切なシミュレーションと判断を行い、商品開発を的確に進めるロードマップの作成は大きく、開発すべき商品の明確化、必要な技術体系の抽出、表現方法の決定、技術開発の時間軸の明確化の4つのステップで作成する。

    <1>採算性の確保
  • 初期投資額の見極め
  • キャッシュフロー確保
  • 損益分岐点の低減
    <2>事業リスクの見極め
  • 投資リスク
  • マトリクスによるリスクの見える化
  • 投資に対する評価
    <3>撤退条件の設定
  • 市場動向の変化
  • 開発進捗動向の評価
  • 販売金額、期間の達成度

4.採算性を考える

4-1.
初期投資をキャッシュフローで回収できるのか、その回収期間はどれぐらいか
回収額 = 初期投資額 - キャッシュフロー累計
キャッシュフロー = 税引き後利益 + 減価償却費
税引き後利益 = 予想売上高-コスト(製造・仕入原価等)-税金


4-2.
損益分岐点比率が低く、早い段階から大きな利益が確保でき、長期間にわたり維持できるか
目標売上高に対して、損益分岐点売上高がどのぐらいあるのかを把握することで採算性を把握する

投資判断の材料となる評価方法はさまざまであるが、それぞれメリット、デメリットがあるので、目的や考え方に応じて適切な方法を活用する。次に投資に対する評価法を示す。

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5.撤退条件の設定

市場環境の変化で当初考えていたような売上が見込なかったり、様々な理由で商品開発の遅れが著しい場合、商品開発を継続するのか中止するのか判断が必要である。ムダな資金流出を防ぐためにも撤退条件を定めておく必要がある。

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6.講座の最後に当たって

企業の将来を決めるような新商品の開発や大型の投資が必要な商品開発、新たな事業分野への進出などはトップが中心になって進める場合が多い。このレベルの話になって来ると大切なのは分析力ではなく決断力である。新商品開発はトップが主導する事が望ましいが、その時に大切なのは意思決定までの階層を少なくする事。階層が深いと良い案がつぶれてしまい無難な案しか残らない。

現在は新型コロナによって企業を取り巻く環境が大きく変わってきている。市場が大きく動いている時期なので、大型新商品や新事業開発を行うのには適した時期だと言える。変化はチャンスと考えて積極的に動いて行く事も必要。新商品開発には時間と費用が掛かるのは間違いなく、それなりの投資が必要になって来る。継続的な投資を行うためにはしっかりと利益を上げられる体質を作っておく必要があり、そのためにはコンサルティングによる社内のムダを排除し筋肉質な体質にしておく必要がある。また新商品開発を行っていく場合に最も有用な情報を得られるのは営業からである。そのため営業力が強い企業は新商品開発力も高い。顧客から得られる情報はシーズではなくニーズに近い場合が多いので、商品化も早く進む場合が多い。

最後に皆さんの自信を呼び戻すために最後に一言お送りする。日本人は発明が苦手で改良が得意と言われるが、実際には数多くの新たな技術を生み出してきた創造・開発型国家である(ノーベル賞も多い)。今後急速にものづくりのイノベーションは進むが、それに対応できる企業を作ることが皆さんの喫緊の課題になるので頑張りましょう。

株式会社アステックコンサルティング

生産革新講座 連載
第104回  新製品の企画開発の進め方(3/3)(2023.3.13)
第103回  新製品の企画開発の進め方(2/3)(2023.2.20)
第102回  新製品の企画開発の進め方(1/3)(2023.1.30)
第101回  原価設計と運用(3/3)(2023.1.12)
第100回  原価設計と運用(2/3)(2022.12.19)
第99回  原価設計と運用(1/3)(2022.11.28)
第98回  経営成果につながる小集団活動(3/3)(2022.11.16)
第97回  経営成果につながる小集団活動(2/3)(2022.10.18)
第96回  経営成果につながる小集団活動(1/3)(2022.9.26)
第95回  調達を機軸とした企業変革力の強化(3/3)(2022.9.5)
第94回  調達を機軸とした企業変革力の強化(2/3)(2022.8.23)
第93回  調達を機軸とした企業変革力の強化(1/3)(2022.7.25)
第92回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(3/3)(2022.7.4)
第91回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(2/3)(2022.6.13)
第90回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(1/3)(2022.5.30)
第89回  間接部門の働き方改革(3/3)(2022.5.18)
第88回  間接部門の働き方改革(2/3)(2022.4.14)
第87回  間接部門の働き方改革(1/3)(2022.3.25)
第86回  生産性指標の設定と活用方法(3/3)(2022.2.28)
第85回  生産性指標の設定と活用方法(2/3)(2022.2.7)
第84回  生産性指標の設定と活用方法(1/3)(2022.1.19)
第83回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(3/3)(2021.2.22)
第82回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(2/3)(2021.2.8)
第81回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(1/3)(2021.1.25)
第80回  生産設計によるコストダウン(3/3)(2021.1.12)
第79回  生産設計によるコストダウン(2/3)(2020.12.21)
第78回  生産設計によるコストダウン(1/3)(2020.12.7)
第77回  生産管理システムを活かした改善(3/3)(2020.11.24)
第76回  生産管理システムを活かした改善(2/3)(2020.11.9)
第75回  生産管理システムを活かした改善(1/3)(2020.10.27)
第74回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(4/4)(2020.10.12)
第73回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(3/4)(2020.9.29)
第72回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(2/4)(2020.9.14)
第71回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(1/4)(2020.8.24)
第70回  指標管理による業務革新の「見える化」(3/3)(2020.8.3)
第69回  指標管理による業務革新の「見える化」(2/3)(2020.7.20)
第68回  指標管理による業務革新の「見える化」(1/3)(2020.7.6)
第67回  部門・組織を越えた改善の進め方(3/3)(2020.6.22)
第66回  部門・組織を越えた改善の進め方(2/3)(2020.6.8)
第65回  部門・組織を越えた改善の進め方(1/3)(2020.5.26)
第64回  全体最適型改善のススメ(3/3)(2020.5.15)
第63回  全体最適型改善のススメ(2/3)(2020.4.27)
第62回  全体最適型改善のススメ(1/3)(2020.4.6)
第61回  攻めの設備保全(3/3)(2019.8.5)
第60回  攻めの設備保全(2/3)(2019.7.22)
第59回  攻めの設備保全(1/3)(2019.7.1)
第58回  食品メーカーの生産性革命!(3/3)(2019.6.17)
第57回  食品メーカーの生産性革命!(2/3)(2019.6.3)
第56回  食品メーカーの生産性革命!(1/3)(2019.5.20)
第55回  コストの見える化(3/3)(2019.5.8)
第54回  コストの見える化(2/3)(2019.4.15)
第53回  コストの見える化(1/3)(2019.4.1)
第52回  強い管理職をつくる!(3/3)(2019.3.18)
第51回  強い管理職をつくる!(2/3)(2019.3.4)
第50回  強い管理職をつくる!(1/3)(2019.2.18)
第49回  設計開発部門改革の第一歩(5/5)(2019.2.4)
第48回  設計開発部門改革の第一歩(4/5)(2019.1.21)
第47回  設計開発部門改革の第一歩(3/5)(2019.1.7)
第46回  設計開発部門改革の第一歩(2/5)(2018.12.17)
第45回  設計開発部門改革の第一歩(1/5)(2018.12.3)
第44回  鋳物工場の生産性向上(3/3)(2018.11.19)
第43回  鋳物工場の生産性向上(2/3)(2018.11.5)
第42回  鋳物工場の生産性向上(1/3)(2018.10.22)
第41回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(3/3)(2018.10.1)
第40回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(2/3)(2018.9.18)
第39回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(1/3)(2018.9.5)
第38回  一品受注型企業のリードタイム短縮(3/3)(2018.8.20)
第37回  一品受注型企業のリードタイム短縮(2/3)(2018.8.2)
第36回  一品受注型企業のリードタイム短縮(1/3)(2018.7.17)
第35回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(3/3)(2018.7.4)
第34回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(2/3)(2018.6.5)
第33回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(1/3)(2018.5.23)
第32回  機械加工職場の生産性向上(3/3)(2018.6.27)
第31回  機械加工職場の生産性向上(2/3)(2018.6.11)
第30回  機械加工職場の生産性向上(1/3)(2018.4.24)
第29回  一気通貫生産のバリエーション化(3/3)(2017.6.19)
第28回  一気通貫生産のバリエーション化(2/3)(2017.5.19)
第27回  一気通貫生産のバリエーション化(1/3)(2017.4.18)
第26回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(3/3)(2017.3.22)
第25回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(2/3)(2017.2.21)
第24回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(1/3)(2017.1.24)
第23回  時代環境と変えるべきもの(3/3)(2016.12.13)
第22回  時代環境と変えるべきもの(2/3)(2016.11.15)
第21回  時代環境と変えるべきもの(1/3)(2016.10.18)
第20回  改革の成否を決める教育の重要性(2015.2.17)
第19回  生産革新の方向性(2014.6.20)
第18回  改善戦略が必要な時代!(2014.5.8)
第17回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(3/3)(2013.8.12)
第16回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(2/3)(2013.7.5)
第15回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(1/3)(2013.5.28)
第14回  時代は経営視点からの改善を必要としている(2/2)(2013.3.21)
第13回  時代は経営視点からの改善を必要としている(1/2)(2013.2.13)
第12回  現場改善だけでは成果につながらない(3/3)(2013.1.16)
第11回  現場改善だけでは成果につながらない(2/3)(2012.12.11)
第10回  現場改善だけでは成果につながらない(1/3)(2012.11.12)
第9回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(3/3)(2012.10.12)
第8回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(2/3)(2012.09.26)
第7回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(1/3)(2012.08.20)
第6回  仕組みを変えればコストは下がる(6/6)「生産設計によるコストダウン」(2012.02.27)
第5回  仕組みを変えればコストは下がる(5/6)「設計によるコストダウン」(2012.02.03)
第4回  仕組みを変えればコストは下がる(4/6)「生産の流れをコントロールする」(2011.12.28)
第3回  仕組みを変えればコストは下がる(3/6)「生産の仕組み自体を変えていく」(2011.09.26)
第2回  仕組みを変えればコストは下がる(2/6)「生産管理の仕組みを変える」(2011.08.29)
第1回  仕組みを変えればコストは下がる(1/6)「コストは狙って下げるもの!」(2011.08.08)

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