第92回 新商品開発の進め方~開発と量産導入

前回は製造業における新商品に要求される品質を明らかにして、その品質を具現化するためのアイデア創出の方法についてご紹介いたしました。
今回は要求品質を確保し、新商品開発の手戻りを防止する方法について説明致します。      

1.FMEAからDRBFMへ

1) FMEAの概要
FMEA(Failure Mode and Analysis)とは、システムを構成する再開の部品や機器に故障が出た場合、上位のサブシステムやシステムがどのような影響を受けるかについて表を使って解析を進めることができる手法です。


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2) 目的と期待効果
① 目的
・システムの機能への機能停止等、望ましくない影響をもたらす故障を明らかにする
・顧客の要求事項を満足させる
・システムの信頼性・保全性・安全性を改善する

② 期待効果
・潜在的な問題点の早期発見、未然防止が可能
・固有技術の総合化。FMEA実施の為に参集した各分野の専門家の知識が統合され多面的に把握できる
・試験、評価の効率化。原因と結果の関係が明らかになり、試験項目を合理的に選択できる
・システム安全性の向上
・設計リードタイムの短縮。致命度評価で優先的に対応する故障、トラブルが明確になるので、ムダの少ない短期設計、開発が可能となる
・後工程への品質情報提供。予測される不具合の網羅性アップ
・技術評価情報のデータベース化が進む


3) 設計FMEAと工程FMEA
① 設計FMEA
開発中の製品が、将来客先においてトラブルを生じた場合の大きさについて系統的、網羅的調査を行うことによって、その影響度を評価し、優先的にその発生源に対して手を打っておこうという趣旨で実施するもの

② 工程FMEA
量産品において各工程毎に発生する不良モードを想起し、記述して解析の出発点とする。そして後工程への影響、製品への影響を調査し、さらには不良の発生確率や検知する方法の困難性も取り上げて総合的に損失の大きさに注目して最優先的な対策を促す、というダイナミックなツールである。


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4) DRBFMとは良いディスカッション
FMEAは多くの企業で受け入れられているシステムですが、各企業でFMEAは管理の手法として定着している場合が多い。形骸化している場合も多く、問題発見のツールとはなっていません。そこで出てきたのがDRBFM(DR Based FMEA)です。自動車関連企業で多く実施されています。


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5) DRBFMの実施要領
FMEAはワークシートに記入することによって問題を発見・管理していくプロセスですが、DRBFMはデザインレビューを組合せて問題を発見し、解決策を検討するプロセスです。「管理」から「気づき」の視点に変えて問題点を見つけ出す創造的な手法と言えます。ここでは元九州大学教授の吉村達彦氏が提唱しているGD3について紹介します。


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開発期間の短縮から、製品の構想図の段階でDRBFMを実施します。次に試作図面のDRBFMを実施します。議論した対応方法が実施されたか、効果があったかを検証するために試験終了後にさらにDRBFMを実施します。


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ワークシートへの記入を効率的行うために情報整理を事前に行います。(要求仕様、使用環境、部品の構造・機能、変化点)。また図面や部品などの必要な物をあらかじめ準備しておきます。


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2.商品開発を淀みなく進める

1)商品開発部門の実態
新商品開発における大きな問題は、変更に伴う手戻りです。上流側で発生した変更は容易でコスト・リソースはさほどかかりませんが、下流側で発生した変更は難易度が高く、大きなコストとリソースが必要になります。多くの場合、各工程での完成度が低いため下流側で問題を発生させており、新商品開発を淀みなく進めることが重要です。


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2)新商品開発の各ステップにも未然防止が必要
新商品開発を淀みなく進めるためには、各ステップにおける手戻りを防ぐ必要があります。そのためにはフロントローディングを徹底して、未然防止することが重要です。品質において未然防止とは「まだ起きていない品質問題の発生を予測し、それが起きないように未然に防止すること」です。仕様決定やアイデア創出、品質作り込みにおいても未然防止が必要で、適切なステップを踏んで、最適なツールを活用することが重要です。


3.まとめ

以上のように製造業における新商品開発においては、新商品開発の基本的な考え方を身につけ、開発の各ステップにおいて適切なツールを活用して着実に各ステップを進めていくことが重要です。商品開発フローにおいて手戻りを発生させず、淀みなく進めることが開発リードタイム短縮や開発コスト低減に直結しますので、改善の第一歩としてまずは自社の商品開発フローを見直してみることから始めてはいかがでしょうか。


株式会社アステックコンサルティング
コンサルティング本部 コンサルタント 前田 俊秀
生産革新講座 連載
第105回  生産管理の重要性 ~製造メーカーにおける生産管理の位置づけ~(2024.10.9)
第104回  新製品の企画開発の進め方(3/3)(2023.3.13)
第103回  新製品の企画開発の進め方(2/3)(2023.2.20)
第102回  新製品の企画開発の進め方(1/3)(2023.1.30)
第101回  原価設計と運用(3/3)(2023.1.12)
第100回  原価設計と運用(2/3)(2022.12.19)
第99回  原価設計と運用(1/3)(2022.11.28)
第98回  経営成果につながる小集団活動(3/3)(2022.11.16)
第97回  経営成果につながる小集団活動(2/3)(2022.10.18)
第96回  経営成果につながる小集団活動(1/3)(2022.9.26)
第95回  調達を機軸とした企業変革力の強化(3/3)(2022.9.5)
第94回  調達を機軸とした企業変革力の強化(2/3)(2022.8.23)
第93回  調達を機軸とした企業変革力の強化(1/3)(2022.7.25)
第92回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(3/3)(2022.7.4)
第91回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(2/3)(2022.6.13)
第90回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(1/3)(2022.5.30)
第89回  間接部門の働き方改革(3/3)(2022.5.18)
第88回  間接部門の働き方改革(2/3)(2022.4.14)
第87回  間接部門の働き方改革(1/3)(2022.3.25)
第86回  生産性指標の設定と活用方法(3/3)(2022.2.28)
第85回  生産性指標の設定と活用方法(2/3)(2022.2.7)
第84回  生産性指標の設定と活用方法(1/3)(2022.1.19)
第83回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(3/3)(2021.2.22)
第82回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(2/3)(2021.2.8)
第81回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(1/3)(2021.1.25)
第80回  生産設計によるコストダウン(3/3)(2021.1.12)
第79回  生産設計によるコストダウン(2/3)(2020.12.21)
第78回  生産設計によるコストダウン(1/3)(2020.12.7)
第77回  生産管理システムを活かした改善(3/3)(2020.11.24)
第76回  生産管理システムを活かした改善(2/3)(2020.11.9)
第75回  生産管理システムを活かした改善(1/3)(2020.10.27)
第74回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(4/4)(2020.10.12)
第73回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(3/4)(2020.9.29)
第72回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(2/4)(2020.9.14)
第71回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(1/4)(2020.8.24)
第70回  指標管理による業務革新の「見える化」(3/3)(2020.8.3)
第69回  指標管理による業務革新の「見える化」(2/3)(2020.7.20)
第68回  指標管理による業務革新の「見える化」(1/3)(2020.7.6)
第67回  部門・組織を越えた改善の進め方(3/3)(2020.6.22)
第66回  部門・組織を越えた改善の進め方(2/3)(2020.6.8)
第65回  部門・組織を越えた改善の進め方(1/3)(2020.5.26)
第64回  全体最適型改善のススメ(3/3)(2020.5.15)
第63回  全体最適型改善のススメ(2/3)(2020.4.27)
第62回  全体最適型改善のススメ(1/3)(2020.4.6)
第61回  攻めの設備保全(3/3)(2019.8.5)
第60回  攻めの設備保全(2/3)(2019.7.22)
第59回  攻めの設備保全(1/3)(2019.7.1)
第58回  食品メーカーの生産性革命!(3/3)(2019.6.17)
第57回  食品メーカーの生産性革命!(2/3)(2019.6.3)
第56回  食品メーカーの生産性革命!(1/3)(2019.5.20)
第55回  コストの見える化(3/3)(2019.5.8)
第54回  コストの見える化(2/3)(2019.4.15)
第53回  コストの見える化(1/3)(2019.4.1)
第52回  強い管理職をつくる!(3/3)(2019.3.18)
第51回  強い管理職をつくる!(2/3)(2019.3.4)
第50回  強い管理職をつくる!(1/3)(2019.2.18)
第49回  設計開発部門改革の第一歩(5/5)(2019.2.4)
第48回  設計開発部門改革の第一歩(4/5)(2019.1.21)
第47回  設計開発部門改革の第一歩(3/5)(2019.1.7)
第46回  設計開発部門改革の第一歩(2/5)(2018.12.17)
第45回  設計開発部門改革の第一歩(1/5)(2018.12.3)
第44回  鋳物工場の生産性向上(3/3)(2018.11.19)
第43回  鋳物工場の生産性向上(2/3)(2018.11.5)
第42回  鋳物工場の生産性向上(1/3)(2018.10.22)
第41回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(3/3)(2018.10.1)
第40回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(2/3)(2018.9.18)
第39回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(1/3)(2018.9.5)
第38回  一品受注型企業のリードタイム短縮(3/3)(2018.8.20)
第37回  一品受注型企業のリードタイム短縮(2/3)(2018.8.2)
第36回  一品受注型企業のリードタイム短縮(1/3)(2018.7.17)
第35回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(3/3)(2018.7.4)
第34回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(2/3)(2018.6.5)
第33回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(1/3)(2018.5.23)
第32回  機械加工職場の生産性向上(3/3)(2018.6.27)
第31回  機械加工職場の生産性向上(2/3)(2018.6.11)
第30回  機械加工職場の生産性向上(1/3)(2018.4.24)
第29回  一気通貫生産のバリエーション化(3/3)(2017.6.19)
第28回  一気通貫生産のバリエーション化(2/3)(2017.5.19)
第27回  一気通貫生産のバリエーション化(1/3)(2017.4.18)
第26回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(3/3)(2017.3.22)
第25回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(2/3)(2017.2.21)
第24回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(1/3)(2017.1.24)
第23回  時代環境と変えるべきもの(3/3)(2016.12.13)
第22回  時代環境と変えるべきもの(2/3)(2016.11.15)
第21回  時代環境と変えるべきもの(1/3)(2016.10.18)
第20回  改革の成否を決める教育の重要性(2015.2.17)
第19回  生産革新の方向性(2014.6.20)
第18回  改善戦略が必要な時代!(2014.5.8)
第17回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(3/3)(2013.8.12)
第16回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(2/3)(2013.7.5)
第15回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(1/3)(2013.5.28)
第14回  時代は経営視点からの改善を必要としている(2/2)(2013.3.21)
第13回  時代は経営視点からの改善を必要としている(1/2)(2013.2.13)
第12回  現場改善だけでは成果につながらない(3/3)(2013.1.16)
第11回  現場改善だけでは成果につながらない(2/3)(2012.12.11)
第10回  現場改善だけでは成果につながらない(1/3)(2012.11.12)
第9回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(3/3)(2012.10.12)
第8回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(2/3)(2012.09.26)
第7回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(1/3)(2012.08.20)
第6回  仕組みを変えればコストは下がる(6/6)「生産設計によるコストダウン」(2012.02.27)
第5回  仕組みを変えればコストは下がる(5/6)「設計によるコストダウン」(2012.02.03)
第4回  仕組みを変えればコストは下がる(4/6)「生産の流れをコントロールする」(2011.12.28)
第3回  仕組みを変えればコストは下がる(3/6)「生産の仕組み自体を変えていく」(2011.09.26)
第2回  仕組みを変えればコストは下がる(2/6)「生産管理の仕組みを変える」(2011.08.29)
第1回  仕組みを変えればコストは下がる(1/6)「コストは狙って下げるもの!」(2011.08.08)

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