第91回 新商品開発の進め方~開発と量産導入

今回は製造業における新商品開発に活用できる代表的なツールについて、ご紹介いたします。


1.QFDで要求品質を明確にする

品質機能展開(Quality Function Deployment)は顧客の要求を代用特性(品質特性)に変換し、完成品の設計品質を定め、これを各機能部品の品質、更には個々の部品の品質や工程の要素に至るまで、これらの間の関係を系統的に展開していく方法です。大きく4つのステップで進めていきます。


1) 原始データからのシーン展開及び要求品質の抽出
市場に受け入れられる商品を開発するために、顧客の声(VOC)を集める。原始情報として顧客の要求、クレームなどすべての情報を集めて記載する。この原始データから潜在的要素を引出すために、シーンを想定して要求品質を抽出する


2) 要求品質展開表の作成
抽出された要求品質を似たもの同士を寄せてグルーピングする。これらを統括するものがあればそのグループの代表とする。これらのグループをさらに統括するものを見つけていく。これらを分類し1次、2次、3次と整理して階層構造をもった要求品質展開表を作成する。


3) 品質特性展開表の作成
顧客志向の立場に立って企画品質を設定する。要求品質から品質特性を抽出していく。


4) 品質機能展開表の作成
要求品質展開表と品質特性展開表を連結して、品質機能展開表を作成する。重要度の変換を行い、設計品質を設定する。


生産革新第20-5


2.TRIZによるアイデア創出

TRIZとはロシア生まれの言葉で「発明的問題解決理論」という意味のロシア語を英語で表記した頭文字をとったものです。旧ソ連海軍の特許審査官であったゲンリッヒ・アルトシュラーが様々な特許を調べるうちに発見した一連の発明法則のことです。


1) TRIZの体系
TRIZはどのような手順で何をどう判断し考えを進めていくかというプロセスと問題解決の各場面でどう考えたらよいかをガイドするテクニックと、自然科学の知識や問題解決のパターン等を体系立てて整理した知識データベースから成り立っています。



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2) TRIZの構造:類比(アナロジー)思考
問題や課題に直面した場合、その解決方法を得ようとするとき過去の経験や知識をそのまま活用しようとする場合が多いですが、経験やスキルの差で成果が大きく異なります。TRIZでは異質の事象間の共通性を利用して問題解決を図っていきます。課題とその解決の側面から共通性を見つけ、問題解決を図ります。



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3) 技術システム進化のパターン
技術システムはランダムに発展しているわけではなく、一定のパターンに従って進化しています。この法則に基づきシステマティックに取組むことで、目標を達成可能となります。アルトシュラーの提唱する8つの技術システムの進化のパターンを紹介します。



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4) 技術的矛盾の解決
ある技術パラメータを改良しようとすると、別の技術特性が悪化・劣化するという状況は開発や設計の現場で日常的に発生します。TRIZではこうした技術用の矛盾を無理なく解決するための手法として40の発明原理と技術的矛盾マトリックスを開発しています。



■ステップ1:技術的矛盾の状況把握
問題解決の基本原則として、テーマの実態を正しく把握することが必要。問題の正しい認識と把握が的確な解決策を導く出発点となる。技術的矛盾を引き起こしている現状を正確に把握し、解決すべき視点を明確にする。


■ステップ2:技術的矛盾を引き起こす技術特性の設定
技術的矛盾の状況を把握した後、技術的矛盾を引き起こす2つの技術特性(技術パラメータ)について検討する。



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■ステップ3:技術的矛盾マトリックスによる発明原理の把握
2つの技術特性の矛盾関係を浮き彫りにするために、技術的矛盾マトリックスにおいて矛盾する2つの技術特性を縦軸と横軸に配置する。縦軸と横軸が交差する枠には、技術的矛盾を解決するためのヒントになる発明原理(40の発明原理)の番号が記述されている。枠の中に示された発明原理を記述された順に従ってアイデアを発想していけば妥協のない解決案を獲得できる可能性が高まる。



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■ステップ4:40の発明原理にもとづくアイデアの発想
発明原理や解説を正しく理解して、これらをヒントに技術的矛盾を解説するアイデアを発想する。


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以上、QFDとTRIZについてご紹介いたしました。次回は品質と性能を確保し、新商品開発の手戻りを防止するFMEAを中心に説明致します。ものづくりにおいて、フロントローディングを徹底して問題を未然防止することは極めて重要です。

 


株式会社アステックコンサルティング
コンサルティング本部 コンサルタント 前田 俊秀
生産革新講座 連載
第105回  生産管理の重要性 ~製造メーカーにおける生産管理の位置づけ~(2024.10.9)
第104回  新製品の企画開発の進め方(3/3)(2023.3.13)
第103回  新製品の企画開発の進め方(2/3)(2023.2.20)
第102回  新製品の企画開発の進め方(1/3)(2023.1.30)
第101回  原価設計と運用(3/3)(2023.1.12)
第100回  原価設計と運用(2/3)(2022.12.19)
第99回  原価設計と運用(1/3)(2022.11.28)
第98回  経営成果につながる小集団活動(3/3)(2022.11.16)
第97回  経営成果につながる小集団活動(2/3)(2022.10.18)
第96回  経営成果につながる小集団活動(1/3)(2022.9.26)
第95回  調達を機軸とした企業変革力の強化(3/3)(2022.9.5)
第94回  調達を機軸とした企業変革力の強化(2/3)(2022.8.23)
第93回  調達を機軸とした企業変革力の強化(1/3)(2022.7.25)
第92回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(3/3)(2022.7.4)
第91回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(2/3)(2022.6.13)
第90回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(1/3)(2022.5.30)
第89回  間接部門の働き方改革(3/3)(2022.5.18)
第88回  間接部門の働き方改革(2/3)(2022.4.14)
第87回  間接部門の働き方改革(1/3)(2022.3.25)
第86回  生産性指標の設定と活用方法(3/3)(2022.2.28)
第85回  生産性指標の設定と活用方法(2/3)(2022.2.7)
第84回  生産性指標の設定と活用方法(1/3)(2022.1.19)
第83回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(3/3)(2021.2.22)
第82回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(2/3)(2021.2.8)
第81回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(1/3)(2021.1.25)
第80回  生産設計によるコストダウン(3/3)(2021.1.12)
第79回  生産設計によるコストダウン(2/3)(2020.12.21)
第78回  生産設計によるコストダウン(1/3)(2020.12.7)
第77回  生産管理システムを活かした改善(3/3)(2020.11.24)
第76回  生産管理システムを活かした改善(2/3)(2020.11.9)
第75回  生産管理システムを活かした改善(1/3)(2020.10.27)
第74回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(4/4)(2020.10.12)
第73回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(3/4)(2020.9.29)
第72回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(2/4)(2020.9.14)
第71回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(1/4)(2020.8.24)
第70回  指標管理による業務革新の「見える化」(3/3)(2020.8.3)
第69回  指標管理による業務革新の「見える化」(2/3)(2020.7.20)
第68回  指標管理による業務革新の「見える化」(1/3)(2020.7.6)
第67回  部門・組織を越えた改善の進め方(3/3)(2020.6.22)
第66回  部門・組織を越えた改善の進め方(2/3)(2020.6.8)
第65回  部門・組織を越えた改善の進め方(1/3)(2020.5.26)
第64回  全体最適型改善のススメ(3/3)(2020.5.15)
第63回  全体最適型改善のススメ(2/3)(2020.4.27)
第62回  全体最適型改善のススメ(1/3)(2020.4.6)
第61回  攻めの設備保全(3/3)(2019.8.5)
第60回  攻めの設備保全(2/3)(2019.7.22)
第59回  攻めの設備保全(1/3)(2019.7.1)
第58回  食品メーカーの生産性革命!(3/3)(2019.6.17)
第57回  食品メーカーの生産性革命!(2/3)(2019.6.3)
第56回  食品メーカーの生産性革命!(1/3)(2019.5.20)
第55回  コストの見える化(3/3)(2019.5.8)
第54回  コストの見える化(2/3)(2019.4.15)
第53回  コストの見える化(1/3)(2019.4.1)
第52回  強い管理職をつくる!(3/3)(2019.3.18)
第51回  強い管理職をつくる!(2/3)(2019.3.4)
第50回  強い管理職をつくる!(1/3)(2019.2.18)
第49回  設計開発部門改革の第一歩(5/5)(2019.2.4)
第48回  設計開発部門改革の第一歩(4/5)(2019.1.21)
第47回  設計開発部門改革の第一歩(3/5)(2019.1.7)
第46回  設計開発部門改革の第一歩(2/5)(2018.12.17)
第45回  設計開発部門改革の第一歩(1/5)(2018.12.3)
第44回  鋳物工場の生産性向上(3/3)(2018.11.19)
第43回  鋳物工場の生産性向上(2/3)(2018.11.5)
第42回  鋳物工場の生産性向上(1/3)(2018.10.22)
第41回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(3/3)(2018.10.1)
第40回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(2/3)(2018.9.18)
第39回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(1/3)(2018.9.5)
第38回  一品受注型企業のリードタイム短縮(3/3)(2018.8.20)
第37回  一品受注型企業のリードタイム短縮(2/3)(2018.8.2)
第36回  一品受注型企業のリードタイム短縮(1/3)(2018.7.17)
第35回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(3/3)(2018.7.4)
第34回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(2/3)(2018.6.5)
第33回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(1/3)(2018.5.23)
第32回  機械加工職場の生産性向上(3/3)(2018.6.27)
第31回  機械加工職場の生産性向上(2/3)(2018.6.11)
第30回  機械加工職場の生産性向上(1/3)(2018.4.24)
第29回  一気通貫生産のバリエーション化(3/3)(2017.6.19)
第28回  一気通貫生産のバリエーション化(2/3)(2017.5.19)
第27回  一気通貫生産のバリエーション化(1/3)(2017.4.18)
第26回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(3/3)(2017.3.22)
第25回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(2/3)(2017.2.21)
第24回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(1/3)(2017.1.24)
第23回  時代環境と変えるべきもの(3/3)(2016.12.13)
第22回  時代環境と変えるべきもの(2/3)(2016.11.15)
第21回  時代環境と変えるべきもの(1/3)(2016.10.18)
第20回  改革の成否を決める教育の重要性(2015.2.17)
第19回  生産革新の方向性(2014.6.20)
第18回  改善戦略が必要な時代!(2014.5.8)
第15回~第17回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(2013.5.28)
第14回  時代は経営視点からの改善を必要としている(2/2)(2013.3.21)
第13回  時代は経営視点からの改善を必要としている(1/2)(2013.2.13)
第12回  現場改善だけでは成果につながらない(3/3)(2013.1.16)
第11回  現場改善だけでは成果につながらない(2/3)(2012.12.11)
第10回  現場改善だけでは成果につながらない(1/3)(2012.11.12)
第9回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(3/3)(2012.10.12)
第8回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(2/3)(2012.09.26)
第7回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(1/3)(2012.08.20)
第6回  仕組みを変えればコストは下がる(6/6)「生産設計によるコストダウン」(2012.02.27)
第5回  仕組みを変えればコストは下がる(5/6)「設計によるコストダウン」(2012.02.03)
第4回  仕組みを変えればコストは下がる(4/6)「生産の流れをコントロールする」(2011.12.28)
第3回  仕組みを変えればコストは下がる(3/6)「生産の仕組み自体を変えていく」(2011.09.26)
第2回  仕組みを変えればコストは下がる(2/6)「生産管理の仕組みを変える」(2011.08.29)
第1回  仕組みを変えればコストは下がる(1/6)「コストは狙って下げるもの!」(2011.08.08)

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