酒造メーカー

Q:直近の清酒メーカーの業界状況はいかかでしょうか?
残念ながら長年に亘り漸減傾向が続いています。特に国内市場は人口の減少に加えて、チューハイ等のRTDの台頭により若者の清酒への関心が低いことやウィスキーの活性化などが要因で種類間の争いでも苦戦していることが要因です。海外市場はまだまだ需要は限定的ですが、ここ十数年は順調に数字を伸ばしていましたが、2023年は輸出量の多い中国や米国が大きく数字を減らした結果、前年を割り込む結果となりました。しかし、中長期的に見れば市場開拓の余地が大きいブルーオーシャンと位置付けて期待しています。
Q:工場診断のきっかけは?
弊社も製造業として消費者に支持される商品開発と共にライン部門の生産性向上に社内で取り組んできましたが、現在の経済環境はIT分野に代表されるように進化の速度が非常に早く、より短時間で大きな成果を挙げることができなければ会社の成長を許してくれるものではありませんでした。さらに、生産設備の老朽化も進み、投資資金を捻出するにも狙いを定めた大胆な低コスト化が不可避の状況となり、自社だけの取組みでは限界があると判断し、次世代への足掛かりの第一歩として生産性向上のプロである外部コンサルタントのノウハウに期待して導入に踏み切りました。
Q:工場診断の結果、アステックコンサルティングを選出いただいた決め手は?
失敗の許されないコンサルティングファーム選出においては複数社のコンペ(競合)を実施し、最終的にアステックコンサルティングさんにお願いすることになりました。選ばせていただいた理由の代表的なものとして以下の3点を挙げさせていただきます。

  • 工場診断にも費用が発生しましたが、現状の自社の状況を過去からの経緯も含めて詳しく分析されており、今、なぜそうなっているのか?という点においてより適切な診断をなされていました。
  • 見える化、標準化、ゼロベース思考という基本ができていないことが改善の進まない原因であることを指摘されました。見える化と標準化から開始し、現状をしっかりと把握した上でゼロベース思考で改善案を考えて改善サイクルを廻すという手法に加え、将来を見据えて一過性の改善でなく、従業員の意識改革と改善活動の定着にも力を注がれているという点に共感しました。
  • コンサルティングに加え、ITツールやシステム開発会社を保有されており、改善の中で、これらを活用したより高次元な改善活動(DX化)にも繋がると思いました。
  • ※実際、改善スタートは「じょぶたん(スマートホンによる時間分析ツール)」による各作業者の時間分析から開始し、今まで見えていなかった多くの事実(課題)が判明し、改善の足掛かりとなりました。
Q:コンサルティングの狙いは?
中・長期的には古くなった生産ラインを更新する必要があります。設備投資をすれば効率化が図られ、少ない人員で多くの生産をすることが可能になります。ただし、現時点での大規模投資は時期尚早と判断しており、これを実施するための足固めとしての土台作りの位置づけとなります。また、生産性向上は永遠のテーマであり、自動化設備を導入しても動かすのは人間であり、その人間に高度な知識と当事者意識が伴っていなければ設備の性能を100%生かすことはできませんし、改善手法を身に付ければ他の分野に水平展開することが可能となります。

具体的には
  1. 生産性向上と省人化による利益構造の改善
  2. 従業員の意識改革による次世代を担える人材の育成と改善活動の定着
となります。

①については、従来から社内で改善活動を実施しており、「年間〇〇時間の作業時間を削減」というような効果は一定数得られていましたが、実際には人件費比率は毎年ほぼ一定で経営成果が感じられませんでした。そこで、コンサルティングにより明確な経営指標へのフィードバックが図れる改善成果を要求しました。 ②については、総じて真面目な社風ですが、個人差はあるものの「モノづくりが本来の仕事で改善活動は付け足し」という風潮もありました。したがって、社長のキックオフ宣言と同時に明確な目標を掲げて「改善活動にも部門全体で本気で取り組む」という意識改革が重要な改善ポイントとなります。 いずれにしても社員の意識改革とQC・IEなどの科学的手法などを学びながら改善活動を実行することで経営成果を得ることが必須でした。
Q:改善活動の内容はどのようなものでしたか?
活動は醸造工程と瓶詰工程で若干異なる方法でスタートしました。

①醸造工程
作業が個人プレイで属人化しており、かつ、ラインの構造上、各作業者は工場内での移動が多く、動きが見えないという問題がありました。そこで、「じょぶたん:スマホによる個人業務分析ツール」を各作業者に配布し、時間毎の動きを一定のルールに基づき入力しました。これにより、いつ、だれが、どこで、どのような仕事を何分かけて実施しているのか、が明確になりました。今まで見えていなかった手待ち時間が想像以上に多いことが判明し、これをなくす活動を中心に、工程毎に小集団を組み、改善のテーマを決めてムダ取りから改善をスタートしました。目標は10%の省人化とし、改善状況は標準作業時間の設定と直接労働生産性のグラフ作成による見える化により進捗管理を行いました。 活動の中で、特に問題と映ったのは、今までは固定人員配置である一方で当日の業務量が日々変動するため、作業密度(生産性)が大きくばらつくということでした。ミニ講座(30分/回)で学んだIE手法等を駆使して2人作業の1人化や、余剰工数の日々の見える化により、余力を他工程への応援派遣や改善活動の計画的な推進に活用できるような管理の仕組みを構築しました。

②瓶詰工程
基本はライン毎の集団作業であり、配置人員の適正化と機械トラブルの低減がポイントとなります。ライン毎の小集団チームと、各ラインの機械トラブルを低減するためのプロジェクトチームの併用で目標は醸造部門と同様に10%の省人化として活動を進めました。配置人員の適正化(省人化)についてはIE手法が大いに役立ちました。また、不良品の流出防止の為、検査人員や機械トラブル発生時に対応する為の人員などの過剰人員配置が課題として浮き彫りになり、設備トラブルの撲滅(恒久対策の徹底による再発防止)や品質トラブルの再発防止(真因の追求とその撲滅)に活動の重点を置くことにより、過剰人員を解消、本来のあるべき人員配置へと改善を進めることができました。

①・②のいずれの工程も、過去からの踏襲型の作業であり、誰かが悪いという話ではなく何の疑問もなく実施されていたものです。明確な目標に向かってゼロベースで見直して仕組みを正すというスタンスでメンバー全員が取り組んだこと、また、直接労働生産性の見える化により、問題を明確にして改善に着手できたことが今までと違った点でした。活動の中で成果が出れば生産性向上が数値で明らかとなり、成果が実感できるということもメンバーのやる気を引き上げる重要なポイントになったと思われます。また、一般課員個人レベルでは節約意識が高じて少額でも費用が掛かることを躊躇して改善に踏み込まないこともありましたが、部門全体で取り組み、費用に見合った効果が得られるのであれば積極的に実施する旨を伝えることで改善方法の選択肢を広げたことも有効であったと思います。
Q:改善成果はいかがでしたか?
2年間の活動結果としては、管理指標として運用していた直接労働生産性は醸造、壜詰工程ともに約30%の向上を達成し、経営成果に直結する省人化についても10%以上の成果を達成できました。この2つの数字の差(30%-10%=20%)は現場の中の管理された余力として現時点でも残っています。余力は改善活動中心に、また、現時点では一部ですが新たな付加価値作業等、前向きな活動に活用されています。そして、定性的な成果としては従業員の意識改革が挙げられますが、これも今後に生きる貴重な財産と考えています。コンサルタントにより、弊社の社風(まじめだが新しいアイデアは出にくい、但し、やるべきことが決まったら確実に進められる)に合わせた指導で、答えを言わずにヒントを与えて自らが考えて「テーマ抽出→改善計画立案→実行→成果の確認」までを自分たちで進めていく手法(コーチング)の運用で、当事者意識を持つこと、成功体験を経験することが徹底され、「モノづくりと改善業務が本来の業務」という意識の醸成に繋がりました。と、同時に、意識の改革は口でいくら説明(説得)してもできないものであり、自らの体験をベースに成就していくものであることも身をもって認識できました。今後の改善活動にもしっかり役立てたいと思います。
Q:今後の取り組みについてお聞かせください
今回の活動の主体はライン現場であり、それを支える部門として設備保全、品質保証班のプロジェクト活動で補完したというものでした。目標達成によりこれで終了ということではなく更なる改善活動のためのベース作り(IE手法と指標の導入)と意識改革(まだ途上)が進み、さらなる高度な改善に向けての準備ができたという認識ですので、今後は2年間で学んだことを有効活用して活動を継続していきます。一方、新たな取り組みとしては以下の2点を考えています。

①サプライチェーンの全体最適
ライン部門の生産性向上、与えられた生産計画をいかに効率的にこなしていくか、という活動も重要ですが、サプライチェーンの営業~間接業務~生産管理~調達~現場までの全体を見た場合の最も効率の良いものづくりを追求する必要があります。事務部門の生産性向上という点も含めて、今後の改善活動のテーマに取り上げたいと考えています。

②DXの推進
2年間の活動の中でも、電子帳票や遠隔カメラによる監視、現場の生産計画や資材手配計画の簡略化(エクセルの活用)などの取り組み検討はしましたが、未だ、大きな成果には繋がっていません。しかし、今後の労働市場を見ても人材確保は非常に厳しい状況にあり、IT技術を活用したDXの推進による業務効率化は欠くことのできない競争力アップの源泉であると認識しています。難易度は高いですが、全体最適思考、ゼロベース思考で進めたいと考えています。

本日はお忙しい中、貴重なお時間を頂戴し、誠にありがとうございました。

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